大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和57年(ワ)7130号 判決 1984年7月23日

原告

平田建設株式会社

右代表者

平田清隆

原告

平田清隆

右両名訴訟代理人

葛井重雄

葛井久雄

被告

河内新聞有限会社

右代表者

小山博

被告

八尾市政を正す会こと

井口正俊

主文

一  被告河内新聞有限会社は原告平田清隆に対し、金二〇万円及びこれに対する昭和五七年九月二三日以降完済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告平田清隆の被告河内新聞有限会社に対するその余の請求及び被告井口正俊に対する請求を棄却する。

三  原告平田建設株式会社の被告両名に対する請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は被告井口正俊に生じた費用のすべてと被告河内新聞有限会社に生じた費用の五分の四とを原告両名の連帯負担とし、被告河内新聞有限会社に生じた費用の五分の一を原告平田建設株式会社の負担とし、原告平田清隆に生じた費用の五分の一を被告河内新聞有限会社の負担とし、その余を各自の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは原告らに対し連名にて朝日新聞、毎日新聞の各朝刊大阪府内版、読売新聞の朝刊大阪府下版およびサンケイ新聞の朝刊河内版の別紙(一)記載の謝罪広告を同別紙記載の条件で一回掲載せよ。

2  被告らは各自原告平田建設株式会社に対し金五〇万円および原告平田清隆に対し金五〇万円並びにそれぞれに対する昭和五七年九月二三日以降完済まで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

4  第2項につき仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  被告河内新聞有限会社(以下被告会社という)は「河内新聞」との名称の新聞を毎月三回五の日に発行するものである。被告会社は昭和五七年八月五日付同新聞第一頁に「大正出張所跡地、市有地払下げに疑惑、平田助役の弟(八工会会長)解体、排水工事の請負い、あげく割安価格で入手」との四段抜きの見出しのもとに別紙(二)記載のとおりの内容の記事(以下本件記事という)を掲載し(但し、⑪⑫⑬⑭は第二頁)、東大阪市、八尾市、柏原市、富田林市など大阪府南部に頒布した。

2  原告平田は八尾市助役の弟ではあつたが、右解体工事排水工事の請負や市有地払下げに関し全く不正の事実はなかつた。ところが本件記事は真実に反して読者に、原告平田が八尾市助役の弟である地位を利用し、兄弟結託の結果、同原告を代表取締役とする原告会社が市から旧八尾市大正出張所の解体工事及び排水工事を不正に請負い、さらに原告平田が右跡地の市有地払下げを不正に受けた旨を印象づけるものである。

3  被告会社は本件記事の掲載頒布行為によつて故意又は過失により原告らの名誉信用を毀損し、原告らに多大の精神的苦痛あるいは社会的評価に対する侵害を与えたもので、これは不法行為を構成する。

4  被告井口正俊は八尾市政を正す会なる団体の代表者であり、本件記事の事実関係を調査し、被告会社に情報を提供した。

5  被告井口は右提供により被告会社に本件記事を掲載頒布させ、被告会社と共同して不法行為を行なつたものである。

よつて、原告らは被告らそれぞれに対し、不法行為にもとづく損害賠償として各金五〇万円及びこれらに対する不法行為の後である昭和五七年九月二三日から完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求めるとともに、被告らに対し、原告らの名誉回復のための措置として請求の趣旨第一項記載のとおり謝罪広告の掲載を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実を認める。

2  同2の事実を否認する。

3  同4の事実を認める。

4  同3、5を争う。

三  抗弁

1  本件記事は公共事業や市有地払下に関し、地方自治法の趣旨に反する事実についての疑惑を究明するため、被告会社が新聞発行者としての使命に基づいて報道したものである。原告平田の兄である市助役及びこれを任命した市長についての記事であつて、原告らの名誉を傷付ける意図によるものではない。本件記事内容は公共の利害に関する事実に係るものであり、被告会社は専ら公益を図る目的でこれを報道した。

2  本件記事の内容はすべて真実である。

3(一)  本件記事が真実でないとしても、被告会社はその内容たる後記(二)の諸事実を、市の職員らに問い合わせるなどして能う限り調査し、その上でこれが真実であると信じて記事とした。右信ずるにつき相当の理由があつたから、被告らに過失はない。

また、被告会社は本件記事と同一頁に原告平田の釈明記事をも三段見出しで掲載した。全体として見れば一方的、主観的な表現ではない。

(二)  本件記事の内容となつた事実関係及びその背景は次のとおりである。

原告会社は設立以来八尾市の請負工事を受注してきた市の指名業者であるところ、その登記簿には本件払下当時、八尾市の財務担当助役であり原告平田の実兄である平田庄治を取締役とする記載があつた。

庄治は昭和三四年五月以降五期一八年余に亘つて市会議員を務め、五二年一二月一五日市助役に就任、五六年一二月一五日再任された。原告会社はこの間の四六年七月七日に設立された。原告平田が代表取締役であり、庄治が取締役の一人であつた。会社登記簿には五七年六月一四日まで庄治を取締役とする登記の記載があつた。翌一五日付で、庄治が五五年一二月二八日に取締役を辞任した旨の登記がなされた。この登記は辞任の時期を遡らせたものと見られる。このようにして庄治は地方自治法九二条の二及び一六六条二項(一四二条準用)の議員及び助役の兼業禁止に違反した。

原告会社は八尾市から、同市太田三丁目二〇五―三所在旧大正出張所の解体工事を入札により工期昭和五七年一月一一日から同月末日、代金三五〇万円で請負つた。破格の高額である。現にこれに先立つ、市の小学校老朽校舎解体工事代金はその三分の二にも満たなかつた。

原告会社はさらに右出張所解体跡地の排水管渠工事を随意契約により、工期同年二月一日から二七日代金一三六万二〇〇〇円で請負つた。

その後原告平田が右跡地732.51平方メートルを市から払下げをうけて所有権を取得した。この払下げの一般競争入札の公告は他の二件とともに、右排水工事中の二月二〇日付「やお市政だより」でなされた。申込用紙の交付受付期間は二月二六日から三月三日までであつたが、他の二件には申込みはなく、本件については五名の申込があつた。三月一二日の入札では一名が欠席をし、四名で入札となり原告平田が本件物件を九〇〇八万円(坪あたり四〇万五八一七円)で落札した。

右市政だよりによる公告方法は、住民に対する周知の方法として公告から入札までの期間が二一日しかない等問題がある。また、本件物件が大正小学校前で府道に近く、バス停もあり地形もよいことや近隣の地価と比較からすると、右落札価格は非常に安価である。さらに、本件落札に至る手続は不自然に迅速である。他の入札者の氏名、入札価格、市の予定価格も公表されない。

以上の事実から、原告らが八尾市助役平田庄治との血縁を利用し、当初から本件土地が原告平田に払下げられることが予定されたうえで、それに先行する解体工事、排水工事をも原告会社が請負い、原告平田に有利に本件土地が払い下げられた不正があると被告らが判断したことは相当である。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1、2、3(一)の事実を否認する。

2  抗弁3(二)について

被告らの主張にかかる事実中、庄治の取締役辞任時期を遡らせて登記した事実、同人の地方自治法違反の事実、旧大正出張所解体工事代金が高額である事実、本件土地払下入札と同時に公告された他の二件について申込者がなかつた事実、市政だよりによる公告方法には問題があるとの事実、本件土地落札価格が割安であるとの事実、解体工事から落札に至る手続が不自然に迅速であるとの事実、当初から原告平田の本件土地取得が予定されていた事実を否認し、被告らが原告らに不正があると信じたことは相当との主張は争う。その余の事実関係は認める。

第三  証拠<省略>

理由

一請求原因1の事実は当事者間に争いがない。

二右事実により本件記事が原告平田の名誉を毀損するものであるか否かを検討する。本件記事の見出し「大正出張所跡地、市有地の払下げに疑惑、平田助役の弟(八工会会長)解体、排水工事の請負い、あげく割安価格で入手」との記載及びそれに続く部分の「なお、当の平田清隆氏は八尾市の工事請負の指名業者をもつて構成する八工会の会長の立場もあり、これまで談合などとかく批判のある業界の体質の一端にふれるものとして注目される。」との記載並びに末尾近くの「この旧大正出張所の解体工事および排水工事の請負工事、ならびに払下げは市民を欺く無効なものである。」「この入札は不正であり、白紙に戻さねばならない。」との記載からすれば、本件記事の一般読者において、八尾市助役の弟である原告平田が兄との関係を利用して、不正に自己に有利な公共事業を請負い、さらには市有地を安価に取得することで、地方自治法の趣旨に反する社会的非難を受ける行為に加担したと受け取ることは明らかである。かかる事実が流布されれば原告平田の社会的評価は当然低下するものと考えられる。したがつて本件記事を掲載した新聞の頒布により原告平田はその名誉を毀損されたといえる。

三ところで、本件記事は解体工事請負契約の当事者として原告会社を摘示する。そこで原告会社も名誉を毀損されたものといえるかを検討する。

原告会社が昭和四六年七月七日に設立されたことは当事者間に争いがない。<証拠>によれば、原告平田において昭和三五年以来の個人経営企業を法人化して会社設立に及んだものであり、その経営は個人経営の頃以来引続き原告平田一人の手腕と信用によつて維持されて来たと認められる。したがつて、特段の事情の認められない本件にあつては、原告会社の財産的側面を離れた無形の評価、信用との関係では、原告平田個人の名誉と別個の無形の損害を認めえない。原告会社の被告らに対する各請求はその余の点にふれるまでもなく理由がない。

四請求原因4の事実は当事者間に争いがない。原告平田は、被告井口正俊が本件記事の事実関係を調査し、被告会社に本件記事を掲載頒布させたことが、被告会社との共同不法行為となると主張する。

<証拠>によれば、被告会社は本件記事以前に被告井口から提供された情報をすべて記事として掲載頒布してきたわけではなく、本件記事についても、被告井口の調査したという事実関係をそのままで掲載することなく、独自の調査を加えて内容の記事としての適当性を判断し、記事の配置活字の大きさ、見出し等すべて被告会社の権限と責任において決定したものと認められる。右認定を左右し乃至は被告会社が被告井口の提供する情報をそのまま記事にする関係にあつた等の事情を認めうる証拠はない。

右事実によれば、本件記事は被告会社の独自の編集を経て掲載頒布されたものであり、被告井口のなした事実関係調査、その結果の提供が本件記事掲載の契機となつたとはいえ、これをもつて被告井口の行為と本件記事の掲載頒布との間に行為の共同があり乃至はこれと記事による名誉毀損との間に相当因果関係がありということはできない。

原告平田の被告井口に対する各請求は、その余の点にふれるまでもなく理由がない。

五被告会社の抗弁について考える。本件記事に扱われた事実が公共の利害に関するものであり、且つその報道が専ら公益を図る目的でなされた場合には、摘示された事実が真実であると証明されたとき、もしくはその事実を真実であると信ずるについて相当の理由があるときは結局、被告会社は不法行為の責任を負わないものと解される。以下順次これらの事実の存否について検討する。

六本件記事は八尾市の公共事業及び市有地払下げ問題を扱つたものである。これに記載された事実が公共の利害に関わることは明らかである。

七<証拠>を総合すれば、本件記事は、八尾市の山脇市政のあり方、平田助役の選任について地方自治法違反の疑いがあるとの観点から、山脇市政を批判し正すとの公益をはかる目的で掲載頒布されたものと認められる。右認定を左右するに足る証拠はない。

八本件記事の内容たる事実のうち、八尾市助役であつた平田庄治が原告平田の実兄であること、右平田庄治が本件物件払下当時原告会社の登記簿に取締役として載つていたこと、本件解体工事を原告会社が指名競争入札により代金三五〇万円で請負つたこと、右工事にひきつづき排水工事を同会社が随意契約で請負つたこと、さらに原告平田が右跡地である市有地を九〇〇八万円で落札したこと、右土地の払下公告が昭和五七年二月二〇日になされ、払下申込期間が二月二六日から三月三日であつたことは当事者間に争いがない。

九(一)  解体工事について被告会社は代金が高額であつたと主張する。

<証拠>によれば、右代金が市の小学校老朽校舎の解体工事代金に比し、同一床面積あたりで可成り高額であつたことが認められ、また<証拠>によれば、右工事に競争入札した六業者のうち四業者が原告平田を会長とするいわゆる指名業者団体八工会のメンバーであり原告平田の顔見知りであつた事実が認められる。しかし<証拠>を総合すれば、右解体工事代金の算定にあたつては、付帯工事が比較的多く、工事現場が重機類の使用困難な場所で人力によることとされた点が考慮され、これらの点で小学校校舎の解体工事の例とは事情を異にしたことが認められる。原告平田と入札業者との知合関係から高額の入札に至つたと認めるに足る証拠はない。これらの事実に照らせば、工事代金が原告に不当に有利であつたとまでは認められない。

(二)  排水工事について被告会社は、原告会社が入札によらず随意契約で請負つたことが不当であると主張する。

右工事が随意契約によつた理由は<証拠>を総合すれば、市の昭和五六年度決算を黒字に保つ目的で年度内にその敷地跡を早急に売払い処分するにあつたと認められ、これは地方自治法施行令一六七条の二第一項第三号の適用ある場合との解釈が可能である。また右各証拠によれば、排水工事につき先行する解体工事との競合を避け、円滑に入札払下の準備を整えることとの関係でも随意契約によるべき相当の理由があつたと認められる。随意契約が不正、不当であつたと認めるに足りる証拠はない。

(三)  被告会社は本件市有地の払下公告から入札までの期間が短かすぎると主張する。

<証拠>によれば他の件に比して本件の入札申込期間が一日短い扱いであつた事実が認められる。一方、前記<証拠>を総合すれば、本件土地の境界について隣地の借地人との合意が遅れたことや昭和五六年度内(同五七年三月末まで)に本件土地の払下を完了することを要請されていたことから手続の完了を急いだことが認められる。これらの事実に照らせば、原告平田に本件土地を払下げるために事を不当に迅速に運んだと認めるには足りない。同時に公告された他の二件について入札申込がなかつたと認めるに足りる証拠はない。

(四)  本件土地払下価格が安価にすぎると被告会社は主張する。

前記<証拠>を総合すれば市は本件土地の処分予定価格を決するに当つて、住友不動産の鑑定、市の不動産評価委員会への諮問に基づき最下限を決定したうえ、入札直前に右最下限から五パーセント強上まわつた額をもつて最終予定価格としたこと、原告平田の落札価格(九〇〇八万円)は右の額を一〇〇〇万円強上まわるものであつたことが認められる。被告会社は右落札価格が付近の地価と比べて割安であると主張するが、公共団体からの払下価格が一般の時価に比して安価であることをもつて直ちにその不正を推認するには足りない。また、地方公共団体である市が落札者以外の入札者の氏名や市の処分予定価格を公表しないことをもつて直ちに何らかの不正を隠蔽しようとするものとは推認できない。よつて本件土地落札価格が不当に安価であるとは認められない。

(五)  以上によれば、助役の弟である原告平田を代表取締役とする原告会社が本件土地上の工事を次々に請負い、さらに原告平田が本件土地の払下げを受けたからといつて、この間の経緯に不正があると判断するには足りない。原告本人尋問の結果によれば、原告会社の市からの請負額が同社の総業務量の一〇パーセントから四〇パーセントを占めていること、及び、原告平田が本件土地を取得後未だこれを具体的に利用していないことが認められるが、これらの事実を加えても不正ありと認めるには足りない。

一〇以上のようにして、本件記事に取上げられた解体工事、排水工事、払下のいずれについても、市当局乃至助役と原告らとの関係で不正があつたとの事実の証明を欠く。

一一記事の内容たる事実が真実であると信ずるについて相当の理由があるというためには、新聞の社会に与える影響の大きさに鑑み、右の事実が単なる憶測、推測に基づくものであつたことでは足らず、それを裏付ける資料又は根拠がなければならない。しかし、特別の調査権限のない報道機関に、右裏付資料や根拠の高度の確実性を要求することはできない。殊に本件記事のように政治に関するものであるとき、報道の自由を損なわないよう配慮すべきであるから、前記相当の理由については報道機関をして一応真実であると思わせるだけの合理的な資料又は根拠があれば足りると解される。

一二(一)  被告会社が本件記事を掲載頒布するにあたり原告らの不正が真実であると信じたことは、前記認定諸事実と弁論の全趣旨から明らかである。前記のような見地に立つて、かく信じたことに相当の理由ありといえるか否かを検討する。

(二) 前記争いのない一連の事実経緯の下で原告らに何らかの不正があつたのではないかとの疑念を抱くこと自体は報道機関として当然のことといえる。しかも<証拠>によれば、被告会社は本件記事掲載に当りできる限りの裏付調査をし、市の担当者や原告平田本人から取材したことが認められる。しかし被告会社が右調査によつて前記争いない事実および認定事実以上に原告らの不正をうかがわせるような資料を把握したことは認められない。かえつて<証拠>によれば被告会社は本件土地払下価格の形成過程や手続について、不正乃至不当のない旨の大綱の説明を市側から受けていたことが認められる。にもかかわらず、本件記事の掲載の仕方、表現は前記二の見出し部分、末尾近くの部分ともに断定的である。<証拠>により明らかなように、被告会社は原告平田の弁明記事を同一紙面に掲載したが、右記事によつて本件記事の断定的表現の持つ効果を減殺する効果は少ないと認められる。

(三) このようにして、被告会社が本件記事のごとく原告らの不正を断定するほどにその不正を真実と信じたことに相当の理由あるものとは認め難く、被告会社が本件記事を掲載頒布して原告平田の名誉を侵害したことは不法行為となる。

一三そこで、被告会社が原告平田に賠償すべき慰藉料の額について判断する。

<証拠>によれば、原告平田が本件記事の掲載頒布により一旦は八工会理事長を辞任する旨の意思表明をするに至つた事実が認められ、前記一の当事者間に争いのない事実と<証拠>によれば、本件記事の掲載された河内新聞は八尾市、東大阪市、柏原市、松原市の各種団体の役員、商工業者を購読者とし、その発行部数は約三〇〇〇部であつたことが認められる。これらの事実と前記認定の個人企業より会社設立に至る経緯等諸般の事情を総合勘案して、原告平田が蒙つた精神的苦痛に対する慰藉料は金二〇万円をもつて相当と認める。

なお、右諸般の事情を総合すれば、名誉回復の措置として、右慰藉料の支払いに付加してなお謝罪広告の掲載を命ずる必要ありとは認めえない。

一四以上の次第で、原告平田の被告会社に対する請求は金二〇万円及びこれに対する本件不法行為の後であることの明らかな昭和五七年九月二三日から完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度において理由があるからこれを認容し、同原告の被告会社に対するその余の請求及び被告井口に対する請求並びに原告会社の被告らに対する請求はすべて失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法八九条九二条九三条を適用して主文のとおり判決する。なお仮執行の申立については相当でないからこれを却下する。

(横畠典夫 中村直文 稻葉重子)

別紙(一)、(二)<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例